鳥の海 03 ― 2015年09月21日 16:54
その日も朝からよい天気だった。
ぼくは兄貴に借りた400ccのオートバイに乗って君の家のマンションの前に乗りつけた。
すでに下に降りて待っていた君が手を振った。
ぼくは君を乗せて、横浜経由で鎌倉へ向かった。
鎌倉を選んだことには特に理由がなかった。ただ、ずい分むかし一度行った覚えがあった。
それが君に深く関係のある記憶だったとは。
君も何にも言わなかった。
君はただ気持ちよさそうにぼくの背中に身体を預けていた。
いかにも源氏の侍たちが馬に乗って現れそうな、山深い鎌倉街道をとおって、ぼくたちは鶴岡八幡宮に到着した。
人出は多かった。
家族連れや恋人たち、若者や年寄りたちの群れの中で、
ぼくたちもひとつの幸せなカップルに見えたことだろう。
ぼくたちはいつの間にか手をつないで参道を歩いていた。
昔いつもそうしていたように。
神の事など考えたこともないぼくだが、君とならんで拝殿の前に頭を下げた。
ぼくが祈った事は何もない。ただのまねごとだ。
だが君は、ぼくが頭を上げてからも、いつまでも手を合わせつづけていた。
目を閉じた君の長いまつげが、繊細に揺れているようにぼくには思われた。
「何をお願いしていたの?」ぼくは聞いた。
ぼくの顔に向き直って、これ以上ない笑顔で君は言った。
「宇宙飛行士になれますように、って」
ぼくが絶句すると、君はスタスタと一人で歩き出したものだった。
ぼくは兄貴に借りた400ccのオートバイに乗って君の家のマンションの前に乗りつけた。
すでに下に降りて待っていた君が手を振った。
ぼくは君を乗せて、横浜経由で鎌倉へ向かった。
鎌倉を選んだことには特に理由がなかった。ただ、ずい分むかし一度行った覚えがあった。
それが君に深く関係のある記憶だったとは。
君も何にも言わなかった。
君はただ気持ちよさそうにぼくの背中に身体を預けていた。
いかにも源氏の侍たちが馬に乗って現れそうな、山深い鎌倉街道をとおって、ぼくたちは鶴岡八幡宮に到着した。
人出は多かった。
家族連れや恋人たち、若者や年寄りたちの群れの中で、
ぼくたちもひとつの幸せなカップルに見えたことだろう。
ぼくたちはいつの間にか手をつないで参道を歩いていた。
昔いつもそうしていたように。
神の事など考えたこともないぼくだが、君とならんで拝殿の前に頭を下げた。
ぼくが祈った事は何もない。ただのまねごとだ。
だが君は、ぼくが頭を上げてからも、いつまでも手を合わせつづけていた。
目を閉じた君の長いまつげが、繊細に揺れているようにぼくには思われた。
「何をお願いしていたの?」ぼくは聞いた。
ぼくの顔に向き直って、これ以上ない笑顔で君は言った。
「宇宙飛行士になれますように、って」
ぼくが絶句すると、君はスタスタと一人で歩き出したものだった。
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